無/桐野晴
 
儚くて
脆い物だって
わかっているのに

それでも
手に入れた瞬間は
満たされて
幸せ

耐えられなくなった瞬間に
全てが壊れてしまいそうで

悟ってしまった瞬間に
もう
後戻りは出来なくて

ただただ
同じように流れる
崩れていく
確かな
刻の中で


遙かな幸せと
消え崩れ去るための無を

どこかで望んでいるのかも知れない

壊すなら
なくなるまで壊して欲しい


幸という快楽か
死という快楽か
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