夕方グッド・デイ/凡
三月九日午後四時時四十五分
僕は友達に会う約束を破られたので
しょうがなく家まで帰っていたら
前方の空 遠く彼方でカラスが堕ちていった
南無。
思ったのは それくらいで
吸うには気持ちの良さすぎる外気を口に押し込めては吐き出す
墜ちていく飛行機を抱きかかえもしない空へと僕の白い息は上がっていく
「おかしな」万有引力の法則が其処では成立していた
その日の空はまるで僕を嘲笑するかのごとく蒼々としていて
綿菓子のような雲は身をよじらせて落ちかけた太陽に愛撫をしていた
それもこれも届かない空での出来事
悔しくなって歪んだ夕焼けに向かって唾を吐き捨てると
ありがとう
そんな言葉が聞こえてきた
まったく
夕方のエロティシズムにはもううんざりだ
そんなことを考えながら
僕は上を向いたまま歩いていたので
道の脇にある冬眠中のたんぽぽを踏んづけてしまった
戻る 編 削 Point(5)