仇の風 あたのかぜ/
田川修作
赤い電車が走る高架の東の空で
ふいに舞う者がいた
文字はその黒色を烏と呼んだ
夕焼けを映す高くそびえた
不吉な刀身のような建物の群れ
その間を縫って烏は軽やかに挑戦する
突如 そこに近現代の殺意が息吹く
黒の一点は鮮やかに上下に螺旋を描いた
その実 それは死の告知にも似ていた
空に走る黒の切り傷 その叫びが戒名
滑空していく墓標
銀座で鐘が六度鳴った
一千万の烏が地図の影から飛び立つ
開かれた翼が夜となりそれを喪とした
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