月/民
まるい夜
すれ違って三日目の空
話したいことがいっぱいある
住所を聞かないでいるのは
どうせならうちに来いって言われてからがいい
なんて思っているから
まるでかぐや姫だ
昨日
タクシーに乗る夢を見た
タクシーに大きな何かを忘れたのだけれど
何を忘れたのかが思い出せない
色もかたちも
重さも
真珠のなる黄金の木の枝とか
竜の首に光る珠とか
火鼠の羽衣
だったのだろうか
タクシーを降りてひたすら歩いていたのだけ覚えている
タクシーだったのだろうか―
月がやさしい
好きで好きでしかたがないあなたのこと
覚えている
歩ける
石造の皇子でも
倉持の皇子でも
右大臣阿部御主人でも
大納言大伴御行でも
中納言石上麻呂足でも
帝でもない
会いたくてさびしくなって電話したんだけど
全然平気
忙しいならいいんだ
また光らせるから
何百年後でも
いいんだ
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