生唾ライフ/カンチェルスキス
ギを出すという伝統的な佇まいの買い物帰りの老婆だった。復元メガネが宙に浮いた。吸い寄せられるようにふらふらと老婆のほうに向かった。まるで生まれた川に帰る鮭みたいだった。鮭メガネが老婆の目元にばっちりおさまると、老婆は急速に小さくなって、おれを見上げて言った。
「ヴィンセント・ヴァン・バッハ」
老婆はわずか1センチほどの体になってた。長ネギも同じスケールに。おれは見た。その一部始終をずっと目撃した。緊張してこんなことしか言えなかった。
「んん、間違い探し!?」
「イエス!」
おれは自信を持って答えた。
「ヴァン!」
「ノー!」
信じてもらえないかもしれないが、これは嘘だ。
メガネを見るとジャブしたくなる男は、梅干が苦手な男だ。
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