短冊人参/北原春秋
僕が詩を書いたからといって
飯の種にはなりそうもない
冥王星が古典的惑星から
脱落し
いくつかの新しい衛星が見つかった
からといって
私の仕事の中身が変わるわけじゃない
アルカイダのような
完全防備の衛生服に
身を包み
とんとんと
カロチンが豊富に入った
野菜室のおばさんの切った
短冊人参を
笊に入れ
釜の中にぶち込む
なにせ人材派遣会社と会社は
てきぱきとした
仕事を要求するのだ
僕は皆が食べる
楽しみな一日一食の
昼めしに花をそえるため
いい頃あいを見計らって
人参を釜から取り出し
試し食いをする
これなら大丈夫
今日も夕陽はきれいだろう
赤とんぼと土蜘蛛は
ぼんやりと
並んで
夕陽を見ている
[グループ]
戻る 編 削 Point(1)