ハニー カム/夕凪ここあ
ハニーカム
あなたは先に行って待ってて
甘い桜の薫るあの大きな木の横で
ハニーカム
これは小さな幸せの呪文
擦り減ったスニーカー
石ころを蹴飛ばして明日に辿りつけたらいい
私は甘い匂いの薫る花びらを栞に
あなたに贈るささやかな本を書いています
あれはいつかの桜の季節
小さな手のひらと手のひらを繋いで
零れ落ちる薄く色づいた花びら
一つ掬い上げては言えずにいたことばたち
離れた手と手 大きな桜に見守られながら
あなたは明日へと
私は昨日へと 向かってしまった季節
風がほのかに運ぶ桜の優しい匂い
その先をあなたは明日と呼んで歩いてく
ハニーカム
あなたに届けに行くぬくもり
首の後ろあたりに触れたなら
ハニーカム
それはあなたに贈る小さな絵本
色褪せることなく
永遠のハニーカム
戻る 編 削 Point(10)