ハニー カム/夕凪ここあ
 
ハニーカム
あなたは先に行って待ってて
甘い桜の薫るあの大きな木の横で

ハニーカム
これは小さな幸せの呪文

擦り減ったスニーカー
石ころを蹴飛ばして明日に辿りつけたらいい

私は甘い匂いの薫る花びらを栞に
あなたに贈るささやかな本を書いています

あれはいつかの桜の季節
小さな手のひらと手のひらを繋いで
零れ落ちる薄く色づいた花びら
一つ掬い上げては言えずにいたことばたち
離れた手と手 大きな桜に見守られながら
あなたは明日へと
私は昨日へと 向かってしまった季節

風がほのかに運ぶ桜の優しい匂い
その先をあなたは明日と呼んで歩いてく

ハニーカム
あなたに届けに行くぬくもり
首の後ろあたりに触れたなら

ハニーカム
それはあなたに贈る小さな絵本
色褪せることなく
永遠のハニーカム
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