レアチーズケーキ/しいこ。
 
彼は耳が聞こえないので
何時も微妙に挙動不信な店員さんは
何時だって笑顔の彼とその彼女の手話を見て
戸惑いながら注文されるのを冷や汗をかきながら
見守るのです

「えーっと…レアチーズふたあつ」
彼女が言います
「あ、えっ?はい、レ、レアチーズですね?」

慌てながらも、きちんと対応したい微妙に挙動不信な店員さん
いそいそとレアチーズをトレーにのせます
「こ、こちらですね?」
「あ、はい」
確認が終わると
箱に詰めます
ケーキは崩れやすいので
慎重に
ふるふるする手を抑えながら、
つめるのです

「お待たせしました」
どんなお客さまであっても大切です
ケーキの箱をわたして、
会計をすませると
まんめんの笑みで
何時だって笑顔の彼とその彼女と
何時も微妙に挙動不信の彼との
しばしの別れがきます

ちょうど熊野前と宮ノ前の間の線路沿い付近の
ケーキ屋さんに

寂しいなぁ
という青い種がまかれました

また会えるさ
という
オレンジ色の種とともに。


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