長く、気が狂うような一日/逢坂桜
 
いいよ」
母は何度もごめんを言う。

     私は死ぬはずだったのに
     生きている
     私は死ぬはずだった
     これは本当に現実なんだろうか
     いまもまだ、あの時なんじゃないんだろうか

     飛び降りようと、夜の暗い窓を見ていた
     父の顔を見て死のうと、小窓から父の背中を見た
     私は死ぬはずだった
     どうして生きているんだろう

包丁は父のとこにある。
もう、戻ってこないだろう。
会社の備品だったのだが、絶対に返してくれなかった。
     あれは現実だった
     いつもと変わらぬ日常がある
     自分がまっぷたつになる
     気が狂うようだ

これが、
書かずにはおれなかった、
長く、気が狂うような一日だった。

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