霧/杉菜 晃
 

喪服の婦人が森から出てくる
入れ替はりに
首うなだれて一羽の鶴が
森へ吸ひ込まれる


霧たちこめて
婦人も鶴も胸まで霞んで
二者はどこで擦れ違つたのだらうか
ともにもういづこにもゐない


森が輪郭を現はしてきて
霧はずつと上の方
樹冠をかすめて
今はすでに雲の中


碧天がぱりつと
その背後にガラスの幕を張つてしまつた



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