優秀の湖に眠る/蒸発王
写真を撮り始めたのは
去年の二月のことだ
私の仕事は
月の表面を映し
氷があるかどうか確かめること
私は
しがない月探査機だ
『優秀の湖に眠る』
物心がついた時には
すでに地球から打ち上げられていて
あの青い天体を
美しいと想いこそすれ
愛情は無かった
プログラムにそったジェットが
これから私を何処に連れて行こうが
何の興味も無かった
そんな2年間の後
月の空に漂った
遠くから何度も見た
白い天体
彼女は
隕石によって
其の肌をぼろぼろにしていた
無数に空く
無骨なクレーター
幾度
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