象/
杉菜 晃
平原を行く象の群れは
なぜかいつも
夕日を背負つてゐる
象よ
夕日をいづこへ
運んで行かうといふのか
そのゆつたりとした足取りで
夕日を
悠久のかなたへ
返上しにゆくのか
さうなると
病も死もない
永遠の朝日が輝き出すのだな
象よ 応へてくれ
悠揚迫らぬ後ろ姿で
歩み去る象
巨大なる受難の影を
色濃く曳き
静まりゆく夕景にのまれ
霞みゆく象
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