旅愁/前田ふむふむ
 
たまを上げる列車の姿態は、
温度計の熱を集めて、晩夏を轢く。

わたしは、浴び続ける、粉々に落下した、
仄かな痛みは、繰り返し秋の窓に、印刷され続けて、
街に散らばる清々しい眼差しのなかに、
列車とともに、溶けてゆく。

煙る低い生い立ちを並べた、夥しい色彩を立ち上げて、
秋の先達が走り出す。
西日に佇む稜線を飾る、眩い幸いを抱きとめて。
目線を下げると、満ち足りた姿の灯台が浮び、
羊水のなかで霞んでいる流れが、ふたたび、
明るさの高度をあげて、
走り続けた列車の旅は、足元を閉じる。

そのとき、わたしは新しく生まれる。生まれ続ける。
聡明にひろがる、凛とした秋の声を染めた、
喝采のなかで。

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