旅愁/前田ふむふむ
 
ひかりの葬列が瞳孔の砂浜に沈み、
溢れる夏が清涼な涙を流す。
新しく生まれた水彩画の冒頭を見つめながら、
わたしは、森の湧き水で掌を浸した
愁風の滴る夏の終わりを均等にまとめる。

青い寝台は遅く揺れる。
わたしの記憶の高さに揃えて。
遅い驟雨は、旅愁に、ひとたび甘い罠を仕掛けて、
わたしの躓いた夏を引き摺る重みを、
うすくなめされた秋にかさねてゆく。

その厚みを増してゆく、剥がれた夏のかなしみは、
うつむき夢想する。

若葉の萌える門出を瞬かせて、
群青の空に身をまかせて昇りつめた美しき幻影。
わずかに恋人のコスモスがうな垂れ、
美風に揺れて。
徐にあたま
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