追憶と天使/白雨
 
いつでも心狂わせる。

 いつでも心狂わせる。
 おお、せめて、
 月こそ出ればよいものを、
 光の中で、僕の心は
 道理を知りも出来ように。
 それを嘆いて何になる?
 すべてはそれが原因だ。
 道理を知りさえしていれば、
 この鉄格子、
 気狂いも、
 すべて見下げて哄(わら)うもの。

 天子は隠れて逃げてゆく、
 僕に姿を見せぬまま、
 それと同時に、
 心地よさ、
 心苦しさ、
 これらも同じに消えてゆく。
 そうして僕に、
 憶い出の褥だけが残る。
 虚しい悲しみだけを胸に、
 僕はそのうち無知の眠りに誘われる。
 
 冷たい噴水の音を格子窓ごしに聞いて・・・。 
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