荒絵/葉leaf
1
西野は佐川透あてに手紙を書いていた。佐川は西野の年来の友人である。
「……先日はお招きいただきありがとうございました。佐川君の知的刺激にあふれた話を聞けてとても楽しかったです……私はというと、最近は記号論に興味を持ち始め、記号論の観点から詩学を構築できないかとあれこれ思案しています……」
西野は書き終えてから、もう一度文章を読み直した。すると彼には、その手紙を自分が書いたようにはとても思えなかった。
彼に佐川透などという友人はいない。そんな友人に招かれたこともない。誰か別の人格が書いたとしか思えないような断片が随所にあった。
2
西野が朝起きると、ひどく体が
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