「君に幸あれ」/広川 孝治
二人で映画に行った、あの日の日差しと同じだね。
今日も情け容赦なく焼きごてを押し付けるように降り注ぐ光。
あれから15年も経ってしまった。
学校の先生になりたいと夢を語った君は今・・
この光の中で教鞭を取っているのかな。
ああ、今は夏休みか。
じゃあ、あの実家に帰ってゆっくりしてるの?
学校帰りに必ず見つめて帰っていた、二階の君の部屋。
白き気高いあの家で家族の団欒を楽しんでる?
それとも新しく帰る実家が出来てるのかな。
そこで僕の知らない誰かと一緒に
君に似た子供を抱いて、笑顔でそこに溶け込んでるの?
例え君が完全に忘れたとしても。
僕は絶対に忘れない。
君と二人
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)