残像/光冨郁也
 

二十一時、地下鉄で電車を待つ、
わたしに、
「みんなで飲みに行くんだけど、どう?」
他の班のチーフJが、
革ジャンに、ロングブーツで、近よる。
「いや」
「女でもいるの?」
「きょうは、疲れたんだ」
「そうだろうな」
タバコを吸う、Jの長髪の横顔がある。
「Fはどう? 仕事慣れた」
「もうすこし、時間いるんじゃない」
うなづくJの、
「営業からの、だからな」と、
ひげのない細いあご、
面長な顔が寒そうに、笑む。

わたしは、
コートの、
ポケットに手をいれたまま、
彼が横からさしだすタバコを、
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