最後の夏/
零弌
うんと強いウイスキーを頂戴。
赤いマルボロを灰皿に擦りながら女は言った
ハイヒールに収まった小さな足
指先に輝くネイルのスパンコール
私、恋愛には興味ないのよ。
赤くなった顔で女は言った
強すぎない香水と
口紅の他は何もつけていない
それなら、俺と恋をしてみないか。
目を細めて俺は聞いた
女は新しい煙草に火を点けて言った
遠慮しておくわ。
貴方には他にもっといい女がいると思うわよ。
帰りの電車の中で、俺は久しぶりに月を見た気がした。
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