愁色の午後/前田ふむふむ
 
失われた街が視界のなかを流れる。
忘れられた廃屋に寄り添う墓標の上で、
目覚めた透明な空が、
真昼の星座をたずさえて、
立ち上がる高踏な鳥瞰図に、赤い海辺をうち揚げる。

繰り返し、磨きあげた弔意の風が香ばしく過ぎて、
みずいろの夢を控えめに、育てた、
沈黙を搾り出す時間が、血液の色を語り始める先端に乗って、
古い衣装の裾を、捲りながら、打ち寄せる。

波は、いつまでも白く。

高さを定められた熱狂は、
孤独な装飾を、いつまでも塗りこんで。

平坦な歪曲を飲み込んだ、
燃える世代は、壊れたバケツでまかれて、
地面に散らばり、灼熱のアスファルトで、
渇きながら、
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