嘘の物語/アンテ
いに憎みあっていた
嘘のひとりを捕まえてみると
怯えて逃げ出そうとするので
両手でぎゅっと挟み込むと
輪郭が崩れて元のかけらにもどった
ガラスの瓶に入れると
からんと乾いた音をたてた
街じゅうの嘘を捕まえて
全部欠片にもどしおえた頃には
瓶はかけらでいっぱいになった
しっかりと蓋をして
高く持ち上げて空にかざした時
底に名前が書いてあることに気づいた
何度か声に出してみると
心のなかでしっくりと落ち着いた
新しい名前で
もう一度最初からはじめてみよう
瓶を軽く振ってみると
かけらが乾いた音をたてた
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