八月の記憶/230
部屋の片隅で
ぼくらを見回して
夏を切り刻んでいくマシン
どこまでも薄くスライスして
やがて八月は
欠片さえもなくなっていく
その副産物として生まれた風を
うまい具合に利用しているのだが
隠された真実を大人たちはひた隠しにする
秘密をたくさん持つことが
大人の条件だと勘違いしている
そんなことを知っているのかいないのか
こどもたちは顔をすれすれに
ワ・レ・ワ・レ・ハ
とおどけて宇宙人になっている
もう少し風力があったなら
ことばがバラバラになっていたかも知れない
冷や汗をかきあわてる大人たちのそぶりに
気づかないこどもたち
あるいは
気づいていないふりをしていることに
気づかない大人たち
その一部始終を記憶に残し終えると
しだいに
九月の扉がひらいていくのだろう
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