(d)/ふるる
 
続けた、赤い墓はどこにも見当たらない。
夢中で描き続ける画家に日差しはますます厳しく照りつけるのだったまるで白しか見えない世界のようにカンバスも白く白く白く塗りこめられていく、ようやく彼が筆を置いたとき時間はそれほど過ぎてはいなかった。どこかよその世界で描いてきたように時間は進んでいなかった、影も伸びていなかった。その絵は奇妙な鳥がもがいているような絵だった。人の目をした鳥の左の翼は取れかかり、右の翼はひどく小さく、前の翼はだらりと垂れ下がり、後ろの翼は刺さっていた、ぜいぜいと肩で息をしている硬いダイヤモンドのような鳥だった。画家はその白い白い画面に「Red」と文字を入れた。Rの字は赤く。彼は赤を好んでいた。「どうしてあの文字だけが赤いのにいさん。」「あの鳥は俺たちだ。罪にさいなまれる」声が聞こえた気がして画家は振り返ったが炎天下の墓場に誰の影も認めようがない。

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