暑中見舞 (旅先より)/ベンジャミン
各駅列車がゴウンとかガタンとか
あんまりうるさい音で行くので
旅の記録も記憶も
まるで陽炎のように歪んでしまいそうです
最近では冷房がしっかり効いていて
天井の扇風機はすっかり黙っています
それでも
人を飲んだり吐いたり忙しく
列車は誰かにとっては遠く
そして誰かにとっては近く
夏の断片を横切っているのです
風景はいつも
上手に描かれた絵画のように
ちょっと新鮮な印象を
わたくしの心象に重ねています
それを慎重にスケッチしようと
ペンを走らせるのですが
列車はガタゴトその速さより
先の目的のために働いています
仕方なく
わたくしは暑中
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)