盛夏の中の静止の音/シホ
 
あつくこく
たかぶりゆく盛夏

うごめき
上昇気分

厚く濃いこの空気の中ひそやかに
偏在しているエアポケット

ひとり
静寂の中にとりこまれて

ぽたりと汗のひとしずく
ささと目の端よぎる影

なんでもない
こういうことはなんでもない

ことりと頭蓋の裡が鳴る
なにも無くなる

こんなことは
恐ろしいほどなんでもない

たかぶる盛夏に潜む無への
くっきり濃い矢印

太陽がでらでら照って
蛙もむしも鳴きやまず

戻る   Point(1)