盛夏の中の静止の音/
シホ
あつくこく
たかぶりゆく盛夏
うごめき
上昇気分
厚く濃いこの空気の中ひそやかに
偏在しているエアポケット
ひとり
静寂の中にとりこまれて
ぽたりと汗のひとしずく
ささと目の端よぎる影
なんでもない
こういうことはなんでもない
ことりと頭蓋の裡が鳴る
なにも無くなる
こんなことは
恐ろしいほどなんでもない
たかぶる盛夏に潜む無への
くっきり濃い矢印
太陽がでらでら照って
蛙もむしも鳴きやまず
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