Mさん/大覚アキラ
 
ペットボトルの中の液体が
あなたの喉に落ちてゆく様子を眺めながら
みんないつか死ぬのだ
ということをあらためて確認する

悲しみよりも大切なのは
明日の朝食べるパンで

切なさよりも大切なのは
一昨日の昼に拾った一万円札で

絶望よりも大切なのは
明後日発売されるあのCDで

虚しさよりも大切なのは
いま喉を潤してくれる水だ

そういう大切なものを
ひとつづつ摘み取っていくようにして
生きているのだ
なんて考えていると携帯電話が鳴る

以前の勤め先の上司が
妙に芝居がかった声でいうには
Mさんが自殺したということらしい

Mさんはずいぶん前から心
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