はるかなるオーチャードグラス/石瀬琳々
 
西陽が傾いてゆく
風を追いかけながら
オレンジの雲は次第に細長く
なつかしい言葉をそっと隠していった


暮れなずむ野辺は一面の草海
薊の花の谷間に静か
蝶がいる 淡い光のような点が
ロマンチシズムに口づけしたような


風が吹く 指先をはるか彼方へのばして


幼い日のオーチャードグラス
夢を見ている緑の波が
激しい心に洗われながら
ゆれる ゆれる 過ぎ行く時を

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