飛水記/木立 悟
霧雨が運ぶは遠い音ばかり
我が水の薄さに萎える羽虫かな
触れるたび遠去かる音日々の音
ゆらぐ道ゆらぐ光の水の声
水もとめ背(せな)を貫く痛みかな
影が消す文字さえ躍る午後の熱
足跡にひとつ目覚める水の羽
草の手に伝わる肌の迷いかな
なみだ涸れ歩く日の夢すぎし夏
天も地も区別なき笑み子らの声
水になれ曇にとどけと子らのうた
草鉄路ねむる命を撫でる風
散るものへ応えし刹那の炎かな
火の粉から火の粉へのうた照らす凪(なぎ)
鏡の手つなぐ水の手したたる陽
飛ぶ水の行方見つめる金属譜
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