近代詩再読 村野四郎/岡部淳太郎
村野四郎を近代詩人に分類するのは多少のためらいがある。確かに第五詩集までが戦前に刊行されており、戦前に出発した詩人として近代詩人の範疇に含めてもおかしくないかもしれない。だが、戦後三十年を経た昭和五十年(一九七五年)まで生きた詩人であり、その詩的業績の多くは現代詩の時代にまではみ出している。『実在の岸辺』(一九五二年)『亡羊記』(一九五九年)などの重要な詩集は戦後に刊行されている。いや、それ以上に村野四郎の詩には「近代詩」と聞いてイメージされる古臭さがほとんどなく、実に現代的で「現代詩」の地表にまっすぐつながっているという感覚がある。同時に、戦前の村野四郎は詩人としての本領をまだ発揮しておらず、
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