青い夏/前田ふむふむ
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種を超えてゆく、黄色を掻きあげる、痩せた掌が、
海の豊饒な眺望を捉えようとして。
あなたは、尚、止まった青い夏を固め続ける。
混ぜ合わせることなく。
諦めた空の高みに色合いを染めて。
仕組まれた怒り、その目覚めのときに、
あなたが立ちのぼる幻想の海を、
走りぬけた眩しい朝に、
選びだされた季節の栄華が、
欲望の地図を赤く塗った、
黎明をつらぬく文明の広場に、
厳かに、置かれた記憶を浮かべて。
あの日から滑りながら、沈んでいく。
敗北した夏は、色を変えずに。
爛熟した走馬灯を、覗き見るわたしに、
眼を逸らして、感傷的な群島の、折れた翼から、
海が滔々と沸きあがる。
みずは、無い。
娼婦のように、渇いている、
青い夏をいつまでも抱えて。
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