みどりいろのゆめのあと/少女的
 
いちめんに 苔のはえた石の門のなかへ
うたたねが さそうように駆けていって
わたしをふりかえる

ひだまりにぺたりとすわりこんで
ふくらはぎににじむ汗を スカートに吸わせながら わたしは彼をみあげます

彼はまるで 滅びてしまった一族の 最後の王さまみたいに
お城のてっぺんにたたずんで
ましたにひろがる こんもりとした緑も そのさきにひろがる街のひとつひとつも飛び越えて
ずっと遠くの 碧くかすむ海の 水平線より ずっと ずっとさきへ 
視線を彷徨わせているので わたしが ぜったいに届かない場所に 彼の心があるのだと思うと
こんな悲しいことはない と 涙がこぼれてしまうのです

まだまだ 高い太陽と 風のとまった夢の跡に
わたしは 夜を願います

くみ合わせた指の いちばんはしの
ちいさな小指の根元に 灯るリボン

ちいさなキスを縫いとめたそれを わたしに結んだのは
穏やかで理知的な目をした 昨夜のやさしいあなたでした

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