ハルキゲニア/クリ
夜の窓を開け放ち 妄想を迎え入れます
棘だらけの彼女の幻覚は
上と下が逆になっていました
秘かに愛する人の想い出の中では
内と外さえ逆になっていました
時さえも反転していましたけれど
離れられない人の心にとっては
流れるほうが明日であったばかりに
何ひとつ違いはありませんでした
そうして夜気のそんな密度のなか
忘却が爆発したことを彼女は知りました
ようやく窓を閉め 錠を下ろしたときには
夜はもう 浸透することを止めていました
彼女はすでに宇宙の目撃者ではありません
宇宙と 彼女が 逆になっていたからです
彼女は なんて おおきい…
そして宇宙は可愛い寝息をたてはじめました
Kuri, Kipple : 2004.03.03
Thanx to たもつさん 「アノマロカリス」を読んで書きました
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