沈んでみても、何も知らないままだった/霜天
沈んでみても、何も知らないままだった
それは六月のサイレン
降り止まない四月の桜
同じところを同じだけ繰り返して
歌声はそれでも高いところを目指している
好きな人を好きなだけ、好きでいられること
それと同じくらい、空を押し上げる手で掴みたかった
人は花と、消える
それは帰れない三月の桜
両手一杯に受け止める七月のサイレン
君の好きだった歌を、好きなだけ歌って
いつも、何かが始まっていく
道は二つに分かれていますが
道は二つに分かれていますが
等しくない景色は僕らに、等しく分け与えられていますから
風は止みますが
潮騒は誰の耳にも留まらず
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