ほおずき/かおり
ほおずきの
鉢植えをもらった。
育てたことなどないけれど、
そんな夏も
いいかな と思った。
一緒にもらった
朱い風鈴は
ベランダ側の窓。
チリン カラン
カララン チリリン
懐かしい音がして。
あのとき、
あのひと は
まるで他人事のように
あんなこと を 言った。
あのこ は
まるで
自分のことのように涙をためて、
そんなこと も 言っていたっけ。
あかあさん の
あのひとこと は
ほんの少し
わたしを傷つけた。
ほおずきは
下の方にある実から
朱くなってゆく。
朝に晩に
たっぷりの水をやらなければ
すぐに
しおれてゆく。
ベランダの
遠くにある 街ばかり
ずっと遥かの空ばかり
気づけば 後ろばかり
見つめていたのに
いまは
足元のほおずきが、大切。
いちばん上にある
蒼い実が
朱く染まるのはいつなんだろう。
夏は
まだ 始まったばかりだ。
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