おやじが見ていたマントルのその先へ/土田
 
わって
ねがえりねがえり
こんどこそ小説にもどる
文字とのいたちごっこ
わたしわたし
きもちわるいとつぶやくわたし
(二度言う)
ラフマニノフと尿意
ラフな魔羅と農婦を用意
(二度言う)
手にかかったしょんべん
(三度言う)
(困った顔で「ああおれだ」という)
ねむりたかった
いっぱつのすかしっぺ
なにかのリモコンが落ちる
目次を読み終える
まだ底は見えそうにない

何も書きたくないことに気づいた
ぜんぶ
ぜんぶがぜんぶだ
ぜんぶの今四時三十分てまえみそだ
定型句のあいさつを
笑顔でしゃべりかける君の姿を見て
小説を網戸のエロい穴に器用に投げ捨て
ぶるぶると震えながら
ブラウン管に八分音符を
たった十ミリ足らずの
粘ついた白い絵の具で

貫通したさきに
君みたいな女がいないことを祈りながらも
おれみたいな男がいないことを祈りながらも
ああ、まだ底は見られそうにない
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