夕刻、蝉の声/LEO
 
日没にはまだ少し早い
真昼の太陽で暖まった道は
この足どりを重たくする

ふうと
ため息に似て
諦めともつかない
息を吐きかけたとき
風が首のあたりを
掠めていく

この道の
ずっと先の
仄暗く蔭った林へと続く
風の通り道

立ち止まり
目を閉じて
途端に
蜩の鳴く声で
頭の中はいっぱいになる

夏の夕刻は
独りの淋しさであった
蜩のあの鳴き声が
そうさせるのだと思っていた
けれど
この中にあるものが
あの蝉の声を
淋しく聞かせていたのかもしれない

‥蝉の声を無邪気に追った
そんなことも忘れて
淋しさを知ってしまったから
もう、あの林の中へ
駆けては行けない

風の通ったあとは
哀しみめいた匂いがした

それとも、それは
気のせいだったかしら
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