小説/河野宏子
の子が、寓話の国の妖精みたいに
あなたの物語を明日から導く。ひとつひとつの足音に
立ち止まってしまうあたしは余白を埋めるためだけに深夜二時、
となり街の大型ブックセンターまで車を飛ばす。充血した目で
店内をあさる。どれも違う。どれも。今は終わらない物語が
読みたい。立ち止まることをさせないお話が読みたい。
ね、あなたが蒔いた種からは、大輪の花が咲いたよ。
甘い草いきれが、胸をあふれさせるぐらいに。
わたしは新しい物語を探す。お財布の中身、ぜんぶ使っても
いいから。
あなたの知らない物語に埋もれて眠りたいの、早く。
戻る 編 削 Point(4)