せかいというビンのなかにふる雨/光冨郁也
せかい、というビンのなかに雨がふります。
あおくとうめいな悲しみが、
ガラスの内がわにすいてきとなって、
したたっていきます。
ビンのなかでも、
そらは、どこまでもはてがないようで、
でも、ちきゅうを一周して、
わたしの背なかから、
こえをかけていきます。
(雨はおすきですか
せかい、というビンのなかに雨がふります。
あまおとは、
子をあやすように、
乾いたちじょうをうるおしていきます。
よるがきて、
雨だれのおとに眠り、
あさもやのなか目をさまし、
雨があがると、
小鳥のさえずりで、
さびしさが、かすかな虹にかわりました。
もし、わたしがいなくなったとしても、
せかい、というビンのなかでは、
こどくがちいさな結晶となって光っています。
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