桜が片方の羽を落としていった/七条 優
 

 痙攣す足首押さえ唇噛み切る。
 現るるは唯一神、極限に飢えた魔物。
 青いペンで落描きしたらば。
 神経に注がれる桜の花びら。
 アリスを追って夢現、煌びやかなまやかし。
 まやかし?
 確証を得ることの出来る現象を生まれてこの方見たことがない。
 精神も。
 肉体も。
 足音さえもがまやかしの闇。
 狂い、涙す、狂い、笑う。
 途切れさすことのなきよう。
 あまりにも貪欲で。
 したらば春風は頭上を通り過ぎてしまったんだ。
 途切れぬことを求める愚者。
 したたる紅を飲み干す眼の奥には青白き炎。
 狂気の桜が舞っている。
 神経はきみを、母と呼ぶだろう。


戻る   Point(2)