【短歌祭参加作品】こちら冷夏/容子
 
口つぐみ視線を逸らし喉鳴らす、ちりんと風鈴心音隠す



寝乱れて汗ばむ半裸ぬぐう情、情事の跡から別れ路辿る



機が熟し、ぬらりと肢体を抜ける赤わたしの金魚すくいを君が



未だ尚別れた生き人想い生き、抜け殻のわたし蝉鳴く墓地へ



今し方お腹に隠したすいかがごろり大きく落ちる甘い夕焼け



背を向ける君に悟られまいと声張り上げ「さよなら」扇風機越しに



ひと夏の身体の汚れ清めよとプールの隅の消毒槽へ



「応答せよ、こちら冷夏」とそこここに咲き匂うは青白い夏




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