七月の夢/230
今日がちりちりし始めたので
お昼のことは迷わなくてもよくなったらしい
相談をすることもなく蛇口をひねると
一目散に今日を冷やしている
水切りをしたざるの隙間から
麺がいやらしくはみだしたのに
君はいやな顔ひとつしないで
笑ってゆるした
食卓の上では
のこりの少ないマヨネーズが
バランスをうまくとり
自慢げに逆立ちをしてみせる
わしづかみにされ
切り刻まれたみどりの上で
いつものように円を描きながら押しだされると
おもわず
ばふっと下品な声をだしてしまった
君がふふっと笑ったので
はずかしくて
もう逆立ちをすることが出来ないでいる
庭では
野良が鉢合わせをして
しばらくのあいだ時が止まっていた
無言のうちに立場が決められると
追う者も追われる者も
うしろ足をドリフトさせながら
小屋の角を駆けぬけて消えた
土ぼこりが舞い
やがて薄れていくあいだじゅう
君もぼくも
おなじ夢を見ている
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