2.低温火傷/朽木 裕
 
硝煙の匂いが立ち込めている。
路地裏の狂気。

それは、
てのひらに収まるサイズ
の。

あぁ、しんでしまいたい
こんな雨の日は。

死んでしまいたい
しんでしまいたい、よ

そればかり唱え続けていたら
上官に、詰られてしまった。

「軍属のお前が死にたいなどとは笑わせる」

云いながら彼は軍靴をかつかつと鳴らして歩く。

雨中に見るその横顔が西洋人のようで美しい。
彼は21の私に20も足した年齢だったが
とてもそうは見えない。

「死ぬなど愚か者のすることよ」

「愚かで結構ですよ、私は…私に生きる資格など」

ふん、鼻で笑って綺麗に磨かれ
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