毒のおはなし/山本 聖
日が暮れた直後の、ざわめきの残る生垣に囲まれた藍色の小道を一人歩いていた子供は、ふと道を抜けた向こう側に小高い丘が月に照らされているのを見る。
此処は。
瘡蓋のできた爪先のじくじくと鳴るのを聞きながら、子供は暗い丘陵へと独り登る。
こんな所に来てはいけないのだ。本当は。こんな、何処でもない場所へ、家々の灯りが燈り始めるこの磁場のような時間帯に、このような秘所で指先の痛みを感じているということは。
けれど、何処に居てもいいのだ自分は、というどこか空虚な思いが一番星と共に子供の心に飛来し、子供は歩を進める。
新月の、弱い光と暗闇。
丘にまばらに生え揃わない芝と低木。
子供はひとつ
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