ヴィクトール(一つの)/静山和生
 
りは
            ビロウドの炸裂する裏側

            触れる手 と口で
            圧 縮される世界の縁をなぞる

            あわ立つ水の修辞に

            身を浸しながら

            音数の飛沫に

            濡れずに

            帰る

            奪われた奪うことが
            奪われてあることを知らず
            切り崩された声の匂いが
            喉を昇る


             名。 ヴィクトール


            刻印される音声の見取り図
            刺し戻る輪郭 線
            名指す振 動は
            あらがう糸へ

            焼き付けられた


            軸とし て
            
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