ヴィクトール(一つの)/静山和生
 

            水の泡立ち
            ゆれる音数の高さに
            ふれない

            内省が速すぎる帰路の
            足もとに散り敷かれるアヴェロン

            一瞬の戴冠をとらえた口の渇 き
            蜘蛛は黙さなければならない
            張り巡らされた糸のしなやかな微動
            太陽の 惨散とした日々を待つことは
            楽しいだろう

             「おお、そ れ

            無音の実をつけた
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