たからもの/二条 敬
私はいつもあなたと一緒だった
生きている内の半分以上
私がしゃべっていると
あなたは笑って聴いてくれたね
やさしくて
聞き上手
あの頃
そんなあなたが好きだった
今もそう
そしてこれからも
ずっと
楽しいひと時は
風のように過ぎて
気が付けばあなたは
もう手の届かない所に行ってしまった
さよならするときは一緒だよねって
二人で笑いあったけれど
うまくいかないものだね
意味なんかないのに
どうして私が後なのだろうと考えてしまう
逢わなければよかった
そうすればこんなに悲しむこともなかった
逢わなければよかった
そうすればもっと一緒にいたいと思わずに済んだ
でも
逢わなければ
あなたを知ることは出来なかった
逢わなければ
楽しいひと時もなかった
こうやってあなたの事を考えるときはいつも
重なり合った二つの指輪を眺めます
一つは小さい私の指輪
一つは大きいあなたの指輪
あなたは指輪に姿を変えて
私の指輪を
私を
包んでくれているように思えて
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