彼女/暗闇れもん
確かに泣きながら
彼女は確かに声を押し殺し
誰にも気づかれないかと怯えながら泣いていた
薄い壁の向こう側で彼女の淡い恋が砕け散ったのだ
本当に可愛く綺麗になったと
それがある日
恥ずかしそうにけれど幸せそうに紹介した男にあると
姉である私はなんともいえない嫉妬心を感じながらも納得した
大事にしてきた
他人には分からないだろう
泣き顔に決してさせないよう心を砕いてきた
本当に今まで感じたことのない憎しみが私を包み込んでいく
妹を泣かせた
そのことだけじゃない
今もまだ彼女の優しさを利用してあらゆることを要求するのだ
笑っていた
彼女は確かに私の前で
けれど確かに
長く共に生きてきた私の耳に泣き声が聞こえた
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