彼女/暗闇れもん
 
確かに泣きながら

彼女は確かに声を押し殺し
誰にも気づかれないかと怯えながら泣いていた

薄い壁の向こう側で彼女の淡い恋が砕け散ったのだ

本当に可愛く綺麗になったと
それがある日
恥ずかしそうにけれど幸せそうに紹介した男にあると
姉である私はなんともいえない嫉妬心を感じながらも納得した

大事にしてきた
他人には分からないだろう

泣き顔に決してさせないよう心を砕いてきた

本当に今まで感じたことのない憎しみが私を包み込んでいく

妹を泣かせた

そのことだけじゃない

今もまだ彼女の優しさを利用してあらゆることを要求するのだ

笑っていた
彼女は確かに私の前で

けれど確かに

長く共に生きてきた私の耳に泣き声が聞こえた













戻る   Point(1)