人魚と/TAMON 10
あの
海にいる人は
人魚でしょう
憂いの表情は
きっと
誰のためでもなくて
多分
その人魚自身の
運命を
自身の人生を
憂いているのでしょう
夜だから
多分
暗くて
いけない
あの
人魚も
夜が明ければ
きっと
都会の
ビルの
駅の
雑踏の
そんな
流れに
漂って
それでも
誰も知らず
もちろん
彼女も
笑顔で
おはようって
言うのでしょう
あの海にいる
あの人は
人魚ではないですか？
いいえ
あれは
僕です
いいえ
あれは
あなたです
同じ歌が
歌えるのは
少し
幸福なことです
そういう事情も
この夜には
似合うのです
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