クスグルにて/大覚アキラ
安っぽいファミレスの窓際の席で
ケータイのメモリーを
一つずつ消していっているのです
ケータイの番号なんて
自分のでさえ覚えていないから
全部消えてしまったら
もう
わたしは誰とも繋がっていない
ひとり
/
自分にお仕置きをするために
左腕を思いっきり噛んだ
痛かったので
すぐにやめた
噛まれても痛くはないのに
自分で噛むと痛いのですね
自分で自分をくすぐっても
くすぐったくもなんともないのに
誰かにくすぐられると
たまらなくくすぐったい
そういうのに
なんだか似ています
/
くすぐる
って
なんだか不思議な響きですね
クスグル
っていう町が
モンゴルとか
ロシアあたりにありそうです
もしかすると
この町がクスグルかもしれません
/
全部
フィクションです
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