影/刑部憲暁
 
おい 影
お前が眩しいぞ
その日々肥え太ってゆくお前の頭骨の
果てしのない蠢きが
輝かしい明日の空の白銀の雲のように見えるのだ

おい 影
お前には頭が下がる
そうして地に這いつくばりながら
一度として明るい光の下に身を晒したことのない
お前の一途な謙虚の心が
そうして次々と身を訪れる見知らぬ地形にも
身を躍らせて飛び込んでゆく
お前の止めどない未来の体躯が
あまりにも崇高に見えるのだ

おい 影
わたしの影
本当にお前はわたしの影だろうか?
わたしを乗り越える者
わたしではない わたし
お前がわたしの後にも
わたしが去った後にも
そうして力強く 光ない輝きに満ちてあればいい
わたし無しに輝け 影
わたしを屠って 真っ直ぐに大地を駆け抜けてゆけ 影

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